日本の医療は内因性疾患では癌の制圧、外因性では外傷を含めた救急医療によって支えられています。救急医療では国内に救命救急センターが約250存在しており内因性・外因性ともに重症患者が集約されますが、そこには必ずしも外傷の専門家がいるわけではありません。よって重症外傷患者は救命ができても社会復帰が難しい症例が存在していることが予想されます。
外傷患者が助け出されてから社会復帰するためには救命救急医がpreventable trauma death(避けられた外傷死)を減少させ、そこから外傷整形外科医がpreventable trauma disability(避けられた外傷性身体障害)を減少させる構図が理想的と思われます。外傷は重症になればなるほど管理は難しくなり、全身の様々な部位に障害や不具合が生じるためトータルマネージメントが必要となります。病院全体でどこまでハード面、ソフト面の資源を投入できるかということがその患者の生命予後と機能予後を大きく左右すると言えます。
大怪我(おおけが)といっても色々な状況を想像されると思います。重症外傷には生命を脅かすようなものと機能的な障害を残すようなものがありますが、これらは全く別物ではなく、多くは共通しており同時に治療を進めていく必要があります。更に時間的制約もあるため計画的治療が求められます。
外傷センターでは骨盤・寛骨臼骨折や上肢・下肢の関節内骨折を含めた複合骨折、軟部組織再建を必要とする開放骨折などを治療しています。可能な限り機能障害を少なくし社会復帰できる患者が増えることを目標にして日々精進しています。
平成13年卒業