気胸とは、簡単に言うと肺に穴が開いて空気が漏れパンクした状態です。症状としては突然の胸痛、動作時の呼吸困難を伴います。しかし、その原因は様々であり、大きく分けると外傷性気胸と自然気胸に分類されます。外傷性気胸には転落や交通事故で肋骨が折れて肺に刺さったり、刃物で刺されたりといった純粋な外傷性の他に、針治療や医療処置による肺損傷、人工呼吸器による圧損傷などの医原性気胸があります。
また、自然気胸には主に若い人がなる原発性自然気胸と、肺気腫や肺線維症など比較的高齢者に多い肺の病気を原因とした続発性自然気胸があります。
このように、一口に気胸といっても様々な原因・病態があり、当然それによって治療に携わる医療スタッフ、治療方針も異なってきます。
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外傷性気胸は、時に肺の血管が損傷し大量出血を伴い生命を脅かす恐れがあります。自然気胸であっても、場合によっては緊張性気胸といって胸腔内に空気が緊満して心臓・大血管を圧迫し心停止する危険性があります。従って、どんな気胸にも対応するためには24時間365日患者さんを受け入れることができる救命救急センターを備えていることが必要です。また、原発性自然気胸と続発性自然気胸は原因も治療方針も異なり、続発性自然気胸に至ってはその病態は千差万別です。これに対応するには呼吸器内科医、呼吸器外科医、看護師、呼吸理学療法士などの呼吸器疾患に精通した医療チームが充実していることが必要です。
幸い当院は救命救急センターを擁し、岡山県内全域と近隣県の一部を網羅した救命救急体制を敷いています。また、当院の呼吸器内科、呼吸器外科はともに肺癌をはじめとした呼吸器疾患に対して常にレベルの高い医療を提供しており、全国的にも高い評価を得ています。当院には気胸の病態研究を目的とする日本気胸・嚢胞性肺疾患学会の理事1名、評議員1名が在籍しており、中四国地区の気胸治療・研究の拠点と言っても過言ではありません。これらのことから、当院は気胸センターを開設するにふさわしい施設であると自負しています。
気胸はいつどこで起こるか分からず、診断・治療に難渋する疾患の一つです。全ての気胸に常時対処し、患者さんに高度な診断と治療を提供し、中四国地区における気胸の診療・研究拠点とする目的で平成24年12月1日気胸センターを当院に開設しました。
※上記メンバーは人事異動等で変更になることがあります。
患者さんには日中・休日・夜間を問わず、まず当院救急外来(救命救急センター)を受診していただきます。ただし、比較的症状の軽い方で50歳未満の方は呼吸器外科、50歳以上の方は呼吸器内科を受診していただきます。他院を受診し、気胸と診断された方は担当医から紹介状を書いてもらい持参して下さい。
上記スタッフの誰かが診察し、病因・病態によって各診療科の主治医を決定します。その後の治療方針については各診療科間で相談の上、協力して治療に当たります。
当院で治療した自然気胸患者をCT画像で原因別に分類したところ、下図のように原発性自然気胸は20歳代をピークとした一峰性の分布を示し、続発性自然気胸は30〜40歳代と70歳代をピークとした二峰性の分布を示すことが分かっています。COPDを主な原因とする続発性気胸は後ろのピークに相当しますが、未成年喫煙を原因とする30〜40歳代をピークとする若年続発性気胸が存在することが分かってきました。この群はこれまで年齢が若いことから原発性自然気胸と区別されていませんでしたが、最近当院から発信した新しい概念です。この3つの疾患群を分ける年齢が、図でも分かる通り50歳ということになります。
30〜40歳代にピークを持つ若年続発性気胸は診断も治療方針もまだ研究段階にあるため、呼吸器外科で診療することになります。従って、50歳未満の患者は呼吸器外科、50歳以上は呼吸器内科で診療することになっています。しかし、ご紹介いただくときは特に区別して戴かなくとも結構ですが、ご参考にして戴ければ幸いです。
気胸の診断・治療に当たり当院の気胸センターを活用していただき、充実した気胸診療を受けて戴くことを願ってやみません。