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第11回アルツハイマーデー記念講演会in岡山(R5.9.28)

講演1:認知症とせん妄

○ 薬は紹介された以外はありますか?

保険適応、国がせん妄に使ってよいと言っている薬はチアプリド1種類しかありません。他にハロぺリドール,ベロスピロン,リスペリドン,クエチアピンの4種類は,保険適応ではないが,使用しても良いという通達があります。現場では家族の了承を得てそれ以外の薬を使う事もあります。

○ 家族が入院し、せん妄の症状があった際に心がけるべきことはどのようなものか?

せん妄になるとつじつま合わないことやおかしな事を言うことがあります。その際は否定したり訂正したりせず,話を合わせてあげることが大事です。ご家族が面会に行くだけで安心しせん妄が減りますので,せん妄がある時こそ面会に行ってもらえたらと思います。

○ せん妄は若い人にも発症しますか。退院したら直りますか?

若い人は一般的になりにくいですが、20代の方が術後にせん妄になった経験はあります。頻度は低いでしょう。若い方に限らず,せん妄は退院したらきれいに治ると言われてきましたが、最近は高齢者がせん妄のあとに認知症になりやすいという報告があり,高齢者ではこのようにせん妄の後遺症が起こることがあります。

○ お薬によることもあると思うが、高血圧・コレステロールのくすりを飲んでいます。大丈夫でしょうか?飲み始めると飲み続けなければならないという事をお聞きしましたが止められませんか?

高血圧,コレステロールの薬でせん妄になりやすいと言われている薬はありません。精神科医が実際に高血圧や高コレステロール血症の治療をしないため申し上げにくいが、一般的にずっと飲み続けるものでしょう。血圧に関して言えばだんだん年をとって上が100をきって立ちくらみが生じてやめる人もいらっしゃいます。食生活が変わって血圧、コレステロール値が安定してどんどん薬を減らしていくという事はあり得るかもしれません。薬をやめることではなく、健康的な食生活、運動などに気を付けたらいいと思います。

○ 最近独り言をよくしゃべるようになりました。ぼそぼそと小さな声でお経のように話すので近くによっても内容不明なのですが、誰かと会話をしている感じもあり、歌を口ずさんでいる感じもあります。私や介護スタッフさんが声をかけると何事もなかったように会話をしてくれるし、笑顔も出ます。怒りっぽくなるわけでもなく、困っていないのですが、このまま過ごしても問題ないのか心配しています。今母には何が起こっているのでしょうか?このまま対処せず生活を続けても問題ないのでしょうか?

基本的に何も困っていない状態ならしばらく様子を見てもよいでしょう。私が経験したかた人の場合,ずっと声と対話したままご飯を食べない、声に言われて出て行ってしまうという人がおられ,対処が必要でした。患者さんに何が起こっているか,一つは幻聴が聞こえていて,その声と会話をしているという場合があります。他には認知症が進行すると自分の頭の中で色んなことを思い出したり考えたりして独り言をしゃべったり、自分の空想の世界で会話したりなどあります。何が起こっているかというのはよく聞いて判断することが大切です。

○ レビー小体型認知症を改善させる薬は今後出てくるでしょうか?

アルツハイマー型認知症で使われるドネペジルという薬が適応には,レビー小体型認知症の適応があります。実際はアルツハイマー型認知症にドネペジルを飲んでもらうよりもレビー小体型認知症の人に飲んでもらうほうが非常によく効く方が多く,幻覚、意識変動などは改善しやすいと思います。

○ ナトリウムがどんどん減っていっている。それがせん妄の治療が進まない理由だと聞きました。どうしてですか?メマンチン塩酸塩をいつもの認知症薬(ドネペジル)にプラスされ3週間のんだからじわじわとそのような体質になったのでしょうか

せん妄は体の状態が悪いことが原因で,意識状態が低下して起こるものですので,身体症状が改善しないとせん妄は改善しません。メマンチンがナトリウムを低下させる副作用は添付文書にも記載されていませんが,腎機能に影響する場合はあるようなので,主治医とよくご相談いただければと思います。ナトリウムが下がるのは体質ではなく,なんらかの体の病気の結果と思います。

○ 2つ質問します。低活動性せん妄も日内変動があるのでしょうか?うつ状態との見分け方を教えてください。

せん妄は日内変動があることが診断基準の一つとなっていますので,定活動型せん妄にも日内変動はあります。過活動型と比べると目立たないかもしれません。 うつ病と低活動型せん妄は鑑別が難しいと言われています。うつ病は悲しい,つらい気持ちがあるのが基本です。低活動型せん妄はぼんやりして活気がないことが特徴ですが,かなしい,つらい気持ちはありません。うつ病は徐々に悪くなりますが,せん妄は急に起こるものです。鑑別の難しい場合は少なくありませんので,精神科医の診察で診断してもらうことをお勧めします。

講演2:認知症と妄想

○ 同じ言葉を繰り返すのは原因は何だろうかなと思うことがあります

忘れてしまっているため、本人は繰り返しているという自覚がないことが一般的です。彼らは自分の忘却を補うために確認しているだけです。このような行動は認知症の一部であり、その点をご理解ください。何度も同じことを聞かれることでイライラされるご家族の方もいらっしゃるかもしれませんが、その不安や心配があるのだと思って、お互いに諦め合うことも大切です。自分が同じことをされた場合、どのように対応してほしいかを考えてみてください。不安が解消されると、何度も同じことを聞かれる頻度も減るかもしれません。お互いに理解し合い、配慮することが必要です。”

○ 妄想の症状がある認知症患者への適切は返答はどのようなものか?(家族がかける言葉として)

妄想にもいろんな妄想があります。ものとられ妄想には、まずは疑問を投げかけ、物が無くなったという時は一緒に探してみましょう。認知症の人は何が不安なのか、その人の不安に寄り添うことが大切です。

○ 妄想に付き合って話をつづけてよいのでしょうか。夫は健在なのに、妄想により外に出てしまい、私を年老いた母と思い込んでいます。その世話をするためにディケアに通っていますが、帰宅願望が非常に強く、そのためディケアでの対応が難しくなっています。帰宅願望の強い方にどう対応すればよいでしょうか?

妄想は誤解に基づくものですが、否定的な態度を取るよりも、話を聞いてあげると落ち着かくことがあります。「帰宅願望」を抱くのは、居場所がないからかもしれません。彼にとって居心地がよく、自分の家のように感じる場所を提供することが重要です。居づらさの原因を見つけるために、彼の気持ちや思いに耳を傾けてみましょう。「帰りましょうか」と言って一緒に外にでてしばらくして「そろそろ家が近くなりましたよ」と言ってまた家に帰ってくる。優しく付き合ってあげることが大切です。

○ 高齢者の妄想は二次妄想になりますか?

認知症の物忘れや勘違いで起こる妄想を2次妄想といいます。統合失調症の被害関係妄想、うつ病に伴う罪業妄想や微小妄想もありますが、何の関連性もなく生じるもので一時妄想といいます。

○ できないことまでできるといい、やっていないことも自分がやっているということは妄想なのでしょうか。例えば、料理や洗濯掃除などは私がしているのですが、すべて自分がしているといいます。認知症になる前は、どちらかといえば心配性だったのですが、認知症になって、自己肯定感がすごくあがり、なんでも自分でできるといいます。こんな風になりますか?

よく外来に来る人など「洗濯はどうしている?」と聞くと「全部自分でやっている」という人がいます。付き添って来た夫は「そんなことはない。全部私がしているんです」といいます。最近のことは記憶に残らず、昔の記憶の中で日々生活しているのですから、仕方がありません。人は誰でも自分の記憶の中の物語で生きています。これまでやってきた料理は今でもしできているつもりです。わざわざ気持ちのよい物語を壊すような行為はやめましょう。プライドや自己肯定感が残っているのであれば、その人の気持ちを壊すことのないように対応していけば、幸せに暮らすことができます。

○ 30分の昼寝が良いと聞きますが、うたた寝でもよいのでしょうか

午後にうたたね寝するとシャキッします。目を閉じて15分でもよいと思います。あまり長く寝ると夜の睡眠に影響するので注意しましょう。高齢になると8時間も眠ることはできません。することがないので、早くから寝床に入り、眠れないからと睡眠剤をもらって寝たりしなくても5、6時間で睡眠は十分です。

○ 中枢神経と対策について

申し訳ありません。意味がよく分からないです。

○ 被害妄想に対処する方法について

認知症ではない状態(妄想性障害)で単身の女性が近隣の対人関係に問題を抱えることが多いといわれます。例えば、隣人が自分の畑の花を盗んでいると感じる場合がありますが、これは一次妄想と言えます。認知症の初期段階でも、物が盗まれたという妄想が被害妄想に進展することがあります。また、自分がお金を使ったことを忘れてしまい、銀行や証券会社が自分のお金を盗んだと感じる場合は、これが二次妄想とされます。 どちらの妄想も訂正することは難しいですが、その背後に何らかの不安がある可能性が考えられます。一次妄想に対しては、抗精神病薬が効果を発揮することがあります。二次的な妄想には、相手の気持ちを考慮しながら、ゆっくりと時間をかけて対応することが重要です。また、環境や人間関係の変化が妄想に影響を与えることもありますので、そういった側面も考慮して支援を行うことが大切です。

○ 背景にある寂しさとはどういうことか?その寂しさを知る方法は?また人によって寂しさは異なるのではないかと思うがどうか?悪循環を起こさない対応とは?背景を知るポイントは?

妄想の背景に寂しさがあることに気づくことが非常に重要です。これは認知症の人との関わり方を理解する上での鍵になります。個々の人によって、寂しさの原因は異なる場合があります。認知症初期の人々は、以前できていたことができなくなる寂しさや、自分の役割を果たせない寂しさを感じることがあります。たとえば、かつて主婦として頑張ってきた人が、ご飯を炊こうとしても水加減がわからずお粥になってしまったりすると、しなくてよいと止められて、もう自分には必要ないと感じるのです。自分で何かをやりたいと思っても、方法がわからないことに戸惑うこともあります。また、いつも叱られる状況に置かれると、そこに自分の居場所がないように感じることもあるでしょう。 寂しさへの対応には、その人の役割が重要です。彼らができることを見つけ、役立つ感覚を持ってもらうこと、そして日常的に「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えることが、彼らが寂しさを感じないようにする大切なコツです。

講演3:認知症と発達障害

○ ストレスがたまってくるとつい大事なことを忘れるのは、「注意欠如」に近い状態なのですか?

ある意味では「その通り」だと思います。「注意」という能力に関しては、どんな人であっても、明確に限界があります。しかも、個人差は、それほど大きくないようです。なので、心配事で頭の中が一杯になっていたら、その人の注意力は顕著に落ちます。また、「うつ」の時などにも、頭の働きが非常に低下するので、注意力も顕著に落ちます。よい質問、有難うございました。

○ 認知症や発達障害は遺伝しますか?

「遺伝は全く関係ない」と言ったら嘘になります。例えば、「糖尿病になりやすい」ことも幾らかは遺伝します。認知症や発達障害でも同じことです。ただ逆に、「両親が認知症だったら必ず認知症になるのか?」と言えば、これまた間違いです。「なりやすさ」は幾らか伝わる。発達障害もそうだと思います。最近、「発達障害」が増えていると言われていて,その原因については色々な説があります。その1つとして、小さい時に「集団で遊ぶ」ことが減っているのも影響しているのではないか、とも言われています(本当のところは分かりませんが)。何にせよ、例外的な場合を除けば、「遺伝」だけで決まるものではありません。

○ 小学4年の軽度知的障害を伴う自閉症スペクトラム障害を持つ子供を持つ親として今から気を付けることなどあるか?

おそらく、今までにも様々なところで,いろいろなお話を聞いてこられたことと思います。「どうしたらよくなるのか」という事を、様々なところで聞いてみるという事自体は、とても良いことです。 一般論になりますが、本人に対してネガティブなことを言い過ぎない。寄り添う、受け入れるということが大切です。ただ、こんな質問をされるお母さんであれば、常日頃からちゃんと寄り添っておられるのだろうと思います。 また、おそらくは既に、専門の先生にも診ていただいていることと思います。個別的なことについては、そのお子さんのことをよく知っている専門の先生が言われることが、最も適切だと思います。信頼できる先生と一緒に歩んで行かれるのが最善です。

○ 発達障害の人が認知症になると何が問題ですか?どうなりますか?ぜひ知りたいです

最近、認知症の方でBPSDが出やすい人というのは、もともと発達障害の傾向を持っているのではないか?と言われることもあります。自閉症スペクトラムでは、拘りが非常に強いとか、能力に非常にムラがあるという特性があります。そこに加えて、加齢とともに認知機能が落ちてくると、今までは何とかカバーできていた所がカバーできなくなり、その人の発達特性がより激しく出てくるという可能性はあります。ただ、発達障害が注目されるようになったのは、せいぜい、ここ20年くらいです。なので、「発達障害」と診断が付いたお子さんを高齢になるまで長期間フォローした研究はありません。本当のところは未だ分からないというのが正しいのかもしれません。

○ 職場に発達障害と明らかに思われる人がいて、振り回されています。若年性認知症ではないかと疑ったこともあります。「ついうっかり」はとても参考になる説明でした。大人の発達障害の人への対応方法、カサンドラ症候群にならない秘訣を教えてください

大人の発達障害と思われる方が職場に居られて、周囲の皆さんは非常に困っているのだけど、本人は「周囲が困っていること」に全く気付いていないとか,全く気にしていないということが、よくあります。それを「ピタッと治せるような良い作戦」があれば、本当に教えて欲しいです。 自閉スペクトラム障害の場合、得意・不得意が明確な人が多いので、得意分野がある人であれば、その得意分野を生かして上手く行くこともあります。ただ実際には、そんなに簡単に上手く行くことは稀です。 なので、多くの場合、周りが何とかするしかない。だからといって、周りが犠牲になるのも正しいとは思いませんが。産業医として実際に経験する場面では、周りの方が職場内で困ってしまって、産業医に相談に来られるので、相談に来てくださった方が倒れないように、その方をどう支えるかを一番に考えています。 また、発達障害を有する方の行動というのは、「周りを困らせよう」として悪意を持って行っているということは、殆ど無いと思います。そういう意味では、発達障害を有する方の行動に振り回されて、周りの方が不幸にならないことが大切です。

○ MCIで金銭管理だけができない人がいるが発達障害なのか?

可能性としては,あり得ると思いますが、断定することは出来ません。若い時からの発達特性を確認し、成人してから現在までの金銭管理状況を教えていただき、現時点における認知機能障害を調べ、それらを総合して判断することになると思います。

○ 認知症の人が鏡に向かって本人と思わずずっと話しているが、そのままでよいのか、又は止めさせて違う事をする方が良いのか

「鏡現象」といい、かなり進行した認知症の方では比較的よく見られます。基本的には,その人が幸せなら、つまり、ニコニコしながらお話されているのであれば問題ないと思います。鏡にむかって怒っているのなら、鏡に何かを掛けて見えないようにする、とかでしょうか。

○ 注意欠如と多動性に対する対策

これは、信頼できる専門医の意見を聞くのが最善だと思います。国立精神・神経医療研究センターのホームページに詳細な解説と治療についての解説があります。是非ご参照ください(https://www.ncnp.go.jp/hospital/patient/disease07.html)。 一般的なことをお答えするとすれば、日常生活のなかでは、わかりやすく指示を伝える、感情的な叱り方をしない、褒めることができることは積極的に褒める、気が散りにくいように環境を整える、学習の課題を小分けにして休憩を挟む、といったような工夫が有効です。また、非薬物治療が常に優先されますが、症状が酷い場合には薬物治療も有力な選択肢です。

○ 発達障害がある人が認知症疾患に罹患すると精神症状や問題行動が出現しやすいと聞いた。具体的にどんな行動が出るか知りたい

もともとの発達特性とどのような認知症疾患に罹患するかにより、各人ごとに非常に異なります。が、一般的に言えば、ご本人の持っている特性がより目立つようになる、というのが多いパターンだと思います。ただ、この辺りはごく最近言われ始めたことなので、未解明のことが非常に多い領域です。

○ 自閉症スペクトラム症の場合の物忘れを気にされる方にはどのような治療方法(対応方法)が望ましいですか

物忘れの程度にもよりますが、まずはメモをすることが大切です。しかもメモは、「1つの手帳」あるいは「1カ所のホワイトボード」など、特定の1つのモノだけに記録していただく必要があります。手帳が何個もあると、どの手帳にメモをしたのかを忘れてしまいます。ポストイットや小さな紙にメモをするのは、それ自体が無くなってしまうので勧められません。
あと、物忘れをしても困らないような環境を作ることも大切です。例えば、「電話があったこと」を覚えておくことも難しいですし、ましてや「電話での伝言を覚えておいて、あとで伝える」などといったことは出来ないのが当然です。電話をくれるような親戚や友人などには、(ご本人の了解を得てからですが)本人の状態を知っておいていただくことで問題を回避できる場合も少なくありません。

○ 脳の神経がダメージを受けているから記憶力が悪くなるのか

認知症の病気においては、「その通り」です。

○ 注意力が散漫になる発達障害の人も記憶力が悪くなるのか?

「注意欠如・多動性障害の方に関する質問」と理解して回答させていただきます。注意がちゃんと対象に向いていないときには、当然、ちゃんと記憶できないので(見かけ上)記憶力が悪くなります。ちゃんと対象に注意が向いている時には、ちゃんと記憶できます。なので、厳密にいえば、記憶力は落ちていません。

○ 認知症と発達障害は関連があるということなのか?

「関連がある」とは言えません。「似たように見えることがある」というのが本当のところだと思います。似たように見えることはあるけど本質的には別のもの、ということになります。

講演:その他

○ レカネマブという薬は認知症の進行のどの段階でも使用できる(効果がある)のでしょうか?進みすぎていては使えないということがありますか?

レカネマブは脳の中に溜まったアミロイドβを除去する薬です。脳の中にこのアミロイドβというタンパクがたまり、その後に神経のネットワークが壊れて認知症になるというアルツハイマー病が発生する仕組み(アミロイド仮説)を考えると、そのネットワークが壊れてしまった後では、いくらそこからアミロイドβを除去しても壊れたネットワークはもとに戻らないので、認知症の極めて早期の段階、つまり軽度認知障害(MCI)や初期のアルツハイマー型認知症とかそういう段階でしかこの薬剤は効果がないので認知症が進行してしまった状態では使えない。そういう意味で認知症の症状が進んでしまうとこの薬は使えないと思う。

○ 認知症の診断は血液検査でできるのでしょうか

近いうちにできる可能性がある。島津製作所などが中心となり、血液でアミロイドを測定するという研究がかなり進んでいて、ほぼほぼ臨床に使えるのではないか?という段階まで来ていると聞いたことがあるが、まだまだと言っている人もいる。はっきりとはわからないが、おそらく近い将来この技術は使えるようになると思うし、レカネマブの添付文書でも、この薬剤の適応を判断するための検査として、PET,髄液検査などと書かれていて、この「など」は、血液検査を意識した表現ではないかと思っている。

○ 車の運転もされる独居女性(元ケアマネ)。自覚のない認知症のかたへ、受診の勧め方を悩んでます。先生のおっしゃるよう本人のプライドを尊重した方法をとりたいのですが、どうしたらよいでしょうか。

受診を焦る必要はないと思います。その人と会話をしつつ、その人にできる支援をみんなで考えて、行って、その結果として受診できるタイミングがあれば、その方向で対応されるのがいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○ 自覚のない認知症患者に本人のプライドを傷つけず受診を進める方法を切実に知りたい。

前の質問へのお答えと同じです。受診を焦る必要はないと思います。その人と会話をしつつ、その人にできる支援をみんなで考えて、行って、その結果として受診できるタイミングがあれば、その方向で対応されるのがいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○ 何か話そうとするとき、このことについてしゃべろうと思っているのに「私今何を話そうとしているのか」と思って忘れてしまう事があるのも物忘れなんでしょうか。たまにこういうことがあります。

認知症で見られる近時記憶障害ではなく、作動記憶(ワーキングメモリー)の調子の悪さですね。どなたにもそういうことはあると思います。忘れて困るような場面では是非メモをされることをお勧めします。話のヒントを書いていれば大抵は思い出すことができます。

○ 認知症は遺伝するのか?

認知症のなりやすさは遺伝する可能性はあるかと思いますが、日本人では、明らかに遺伝する認知症は現時点ではあまり報告されていないと思います。

○ 持っているものを落とすのは脳の神経に問題があるからなのか?

持っているものを落とす時、頻度的に多いのは、「不注意」ではないでしょうか。注意が持っているという状況に向いていないという状況です。時にてんかんの人にもそうしたことは見られます。

○ 血流が悪い人は脳が委縮しやすいか?

脳の血流が悪くなると脳は萎縮する可能性が高いでしょう。逆に、脳の萎縮があるといつも脳の血流が悪くなっているかというと必ずしもそうではないかも知れません。脳の萎縮には様々な原因があると言われていて、その一つが血流と思って頂いていいと思います。

○ 潜在的な認知症患者は多いとのこと、先生によっては認知症は治らないからと治療を見送る?診断される方が少ないとききました。65歳以上の2/3は認知症と聞いたことがあるが、臨床の場では実際はどのような割合だと感じているか?

現在、おそらく日本に600万人余りの認知症の方がいて、その多くは65歳以上で、65歳以上の日本人はおよそ3600万人いますので、高齢者の6人に一人が認知症ということになります。90歳以上の人に限ると二人に一人以上の方が認知症だと言われています。認知症は治らないから何もしないなんてことをいう医師はほとんどいないはずです。認知症の治療には薬物療法と非薬物療法があり、また、予防や対応の方法も研究されていて、これらのことを組み合わせることにより認知症の進行を遅くしたりBPSD(認知症の人の行動心理症状)の発生を抑えたり軽くしたりして、認知症の人が健やかに過ごせたり、その時間を長くしたり出来ると思われています。

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