○ 初めから認知症と思わずに通常のかかりつけ医で受診をしたとしてもそこからの「認知症」の診断で医師ネットワークで次へ専門的につなげてもらえるのか?
現在その話を深めていっており、今後もその予定で動いていくので安心してよいと思います。
○ 今後、ACPはこのかかりつけ医制度を利用して登録制になるのでしょうか?
ACP(アドバンスケアプラン)についてはどうなるかはまだ明らかではありませんが、将来的には色んな事がつながっていく事になると思われるため、遠い将来には密接な関係になっていくと思います。
○ かかりつけ医制度についてよくわからないが県外でも同じような制度はあるのか?
全国的にかかりつけ医とはかかりつけ医の研修会に参加した先生方の事を呼んでおり、各都道府県に必ずいるためそれぞれの地域のホームページに掲載されていると思いますので見てください。岡山市の場合はさらに踏み込み登録制にすることで認知症に深く対応してもらっています。
○ 包括から認知症かかりつけ医への連携は何件程度の実績があるのか?
今年度6月から11月末時点で35件の実績があります。
○ かかりつけ医の認知症に対する認識が弱いと思う。父親はレビー小体型認知症だが、私と母がレビー小体型認知症では?と考えるようになった後、1年たってもかかりつけ医からは何も返事をもらえなかった。赤十字の物忘れ相談会に行って初めて医療センターの神経内科を紹介してもらえた(須藤医院、大橋医院)
DLBは単純ではなく、様々な症状があり、かつアルツハイマー型認知症に合併している場合も多いので診断はなかなか難しいことが多いので、簡単に診断ができるというものではなく、時間がかかることはあります。
○ かかりつけ医から認知症のかかりつけ医にかかる場合、紹介状は必要か?
可能な限り、紹介状をいただいたほうが、流れはスムーズになると思います。
○ 認知症だが、独居で自分で地域包括支援センターに連絡が取れない場合はどうなるのか?
親戚や近所の方、そして民生委員の方々などが地域包括支援センターに相談していただくとより良い方向にもっていくことができると思います。
○ かかりつけ医の基準はどこか?最初に診断する意思によってその後の対応や治療方針が決まってくるのでより正確な診断(認知症の種類等)を受けたいが、簡単な問診で画像診断もなく判断される医師はいないのか?
認知症の診断には画像は不要です。経過とその時の認知機能が分かれば診断は可能です。認知症の原因を詳しく探ろうと思うと画像所見も必要となってきます。当初より必ずしも正確な診断ができるわけではないので経過を見ながら柔軟に診断や治療方針を変更することはあると思います。かかりつけ医の基準は定期的に認知症の研修を受けていることと認知症に対する診断や治療に造詣が深いことなどがあげられ、安心して受診できる先生方と考えています。
○ かかりつけ医の最新の情報は定期的に更新されているのか?
かかりつけ医となる条件の中に定期的に研修を受けることとなっていますのでその都度最新の情報は更新されていると思います。
○ 入所してのケアマネだが、BPSDでの入院加療は初診から可能か?中島先生、石津先生の病院では入院加療病床は何床くらいあるのか?施設からの相談は切迫した状況がある。
慈圭病院ではBPSDでの入院加療は初診から可能な場合もありますが、なるべく受診前に情報をいれていただくと対応はよりスムーズになると思います。岡山赤十字病院ではBPSDの背景に重篤な身体疾患がある場合にはお受けできると思います。病床数は慈圭病院で70床くらい、岡山赤十字病院では決まっていません。岡山赤十字病院では認知症だけの入院はありません。身体疾患を伴った場合にのみ入院対応をする場合はあります。
○ 大きな医療病院に行くと個人・専門医の地域のかかりつけ医制度の用紙を手に取ってみた事もあり、大きな医療よりも個人医院とのつながりがあり安心している。
ありがとうございます。
○ 本当に近所の先生で大丈夫か?
その先生が認知症かかりつけ医に登録されている場合は大丈夫です。
○ とても分かりやすくビデオもとても参考になった。身近に認知症について相談できる医師がいるという事はとても心強いです。
ありがとうございます。
○ かかりつけ医の制度が始まって運用で一番困ることは?」
まだ大きく困るようなことはございません。
○ かかりつけ医がいなければ中区で認知症の専門医はどれくらいいるのか?
認知症の専門医という定義にもよりますが、日本認知症学会と日本老年精神医学会の専門医を調べようと思えばそれぞれのホームページをご覧ください。ほかにもいくつかの組織(学会)が専門医を養成していますのでそれぞれホームページには名簿が出ていると思いますのでご確認ください。
○ 在宅を望んでいるので地域にかかりつけ医が増えて欲しい
認知症かかりつけ医の先生方が増えるように行政からも努力しています。
○ 訪問しても状況把握や医療拒否があればどう対応するのか?
1度だけではなく何度も訪問を繰り返して信頼関係を築く。また地域の方や色々な方から聞き取りをして情報収集をしている。
○ 施設に入所していてもそこで虐待を受けている人も多いと聞くが、岡山市ではどうなのか?
包括は基本的に在宅の方に関わっていて、施設入所された場合、虐待からの入所など特別な場合を除いては後追いをしていない。施設入所者の高齢者虐待は岡山市の高齢者福祉課で対応している。包括が関わっているケースで入院から施設入所する際に成年後見人を市長申立が必要な場合は、包括が必要に応じて申請書類の作成などを支援し施設入所につなげることもある。(ケースバイケースで対応)
○ 最近の虐待などの資料が欲しい。またはネットでプリントアウトできるようにしてほしい。傾向等知らないことが多く、周知することで防ぐことができそうだから。
包括の相談窓口にそれに関するパンフレットを置いているのでそういったものも見ていただければ、と思う。岡山市のホームページにリーフレットと高齢者虐待防止ガイドラインもアップされているので参照いただきたい。
○ 虐待を包括支援センターへ通報し、その後どのような対応をされたのかが外来主治医にフィードバックされているのか?
安全の確保ができたという事は伝えるが詳細については伝えることで外来主治医に迷惑をかける危険性がある事もあるため、その辺りは慎重に進めていかないといけないと考えている。
○ 認知症の方を家で看ている方も被害者になりえるのではないか?
独居で誰ともつながっておらず、そのまま認知症が進んだケースの場合、その方とつながっていくためのきっかけがなく、まずは人間関係から構築していく事になる。そうなるとその先の支援につなげたくてもまず信頼関係からの構築になるのでとても時間がかかる。家でそのまま倒れて発見されず亡くなってしまうケースもある。その辺りをどうしていくか?というのは今後の課題だと考えている。
○ 身体的な虐待で受診するのが整形外科や脳外科になるため、外来主治医・かかりつけ医は気づきにくい。その辺りは何か工夫や連携はしているのか?
包括は虐待の事実を確認し具体的な虐待対応を取っていく際には医療情報が必須となるため必ず外来主治医・かかりつけ医の先生方に相談と協力を求めている。突発的に発生した暴力などによる緊急搬送等で受診、入院された場合は病院の相談員から包括に相談が入ったり、病院から警察、そこから市、包括に通報をいただいたりしている。
円滑に相談対応できるように日頃から関係機関と情報共有を心がけている。
○ 虐待が増え、地域包括センターのみでは対応できなくなったらどうなるのか?
虐待対応は一件あたりの対応に時間がかかることが多く、すでに件数も増えていることもあり対応に苦慮している。また経験の浅い職員では対応できかねる案件も多く、職員数も限られているため職員養成も急務と考えている。
包括だけでは対応できかねることも多く行政・医療・福祉・警察・民間サービスとの協力、連携がなければ今後の対応は困難と考えている。
○ グレーゾーンのままディサービス等の在宅サービスが続くとどの範囲まで情報公開、把握、共有していくのか(例えば「~になればケアマネに報告とか・・・」)
どこまでが虐待でどこまでが虐待でないかを明確に白黒つけることは難しい。ただ客観的に不適切な状況が発生しているのであれば報告・相談するよう努力しなければならないし、生命または身体に重大な危険が生じている場合は速やかに市町村に通報しなければならないと法にも定められている。
非常にデリケートな部分に介入していくことになるため関係者と協議を重ね組織的に慎重に対応していく必要があるため抱え込むのではなく、まずは些細なことも相談することが大切。
○ 親子関係、日ごろから良好でないと難しいと思う。
親子関係が良かったとしても毎日の介護ストレスで虐待につながるケースも多い。良好であろうとすることがストレスになることもある。無理に抱え込もうとせず相談することが大切。包括にご相談ください。
○ 大変に複雑な症状が顕現するレビー小体型認知症の場合、言葉による虐待が起こる可能性は自分の経験からもあると思う。
専門職ですら自分の家族がそうなると戸惑います。相談できる相手を作ることが大切。かといって近しいものには相談しに食い込みにくさがあると思うのでかかりつけ医の先生や包括にご相談ください。
○ 虐待が疑われても通報することを本人が拒否、通報することによってさらにひどくなるのでは、という不安がある。
本人が拒否した場合はなかなか通報しにくいが、生命の危機が予測、発生している場合は通報しなくてはいけない。包括もそういったケースに遭遇することは多々あり、警察に協力を要請し保護につなげている。警察が介入することで初めて事の重大さに気づかれることが多い。
○ 虐待で一番多いのは何か?(経済的、ネグレクト、暴力、その他の中で)
虐待で一番多いのは身体的虐待。身体的虐待が単独で発生しているわけではなくいくつかの種別が絡み合って発生していることが多い。
○ 虐待がひどい場合は優先的に施設入所の対応をするのか?
医療的な処置が必要な場合は入所ではなくまず医療機関に受診、もしくは緊急搬送。そして本人と養護者を分離する必要があるかないかを検討。受け入れ可能な親族が他におられる場合は親族に対応をお願いする。本人の自立度が高くお金を持っている場合は自費で泊まれるサービスの利用も考えられる。誰も頼れる人がいない、お金がない、緊急的な保護が必要な理由がある場合は緊急一時保護を適用する。必ずしも施設入所というわけではない。
○ 相談してどのくらいで対応してもらえるのか?それは危険度によっても違うのか?
通報があった場合、緊急性が高いと思われるケースについては通報を受けた後すぐにセンター内と市で対応を協議し具体的な対応を取っている。
ただ、現に虐待が発生している最中に入って止める機関ではないので、そういった場合は警察にも通報をお願いしたい。あくまでも事が起こる前、もしくは起こった後の高齢者の生活の場を調整する機関だと考えていただきたい。
「こういったケースはどうなのか?」といった少し相談したいというような連絡を受けた場合は事情を伺いし、緊急性が低いようであれば何らかの形で事実確認のための訪問等で目視の確認、それが難しいようであれば電話等で関係者への聞き取りを行っている。
その確認方法も相談者と相談しながら行っている。目安としては通報があってからおおむね48時間以内に実施するようにしている。
○ 生活困窮=虐待という認識はあくまで一部分であると思う。1位が介護疲れというのではなく、なぜ、介護疲れが起きるのか?そこを行政が支援しないと減らないと思う。
おっしゃられているとおりだと思う。虐待につながるそもそもの社会背景、社会問題があってのことであると認識している。ゆえに虐待している養護者も支援の対象として包括は支援している。虐待対応は本人と養護者を分離することが目的ではない。分離することでお互いに見つめなおし良好な関係を築けたケースや、虐待を機に支援者が入ることで様々な支援につながり虐待を解消できたケースもある。そういった支援に事前に繋がれるようにフォーマル・インフォーマルな制度等の情報提供も包括は行っている。
○ 認知症であってもできることは沢山あるとおもう。させてあげても良いと思うがどうか?
危険性がないようなことであればおっしゃられているとおりと思われる。ただ本人の状態や環境、させてあげる内容によって判断が分かれると思われるので、かかりつけ医の先生や担当のケアマネージャがおられるのであれば相談していただきたい。
○ セルフネグレクトのごみ屋敷の場合、包括の方はどのように対応しているのか?
ゴミは本人にとって財産と認識されていることもあり、そういった場合、ごみの処分は難しい。本人に了解を取って生活環境を少しずつきれいにしていき、ヘルパーさんが入れる程度になってやっと具体的なサービスにつながることもある。そのためにはまず本人との信頼関係の構築が必要なため時間がかかってしまう。事が起きる前に支援が入るのが望ましいが支援拒否が続き、緊急搬送になってからの支援になることもある。
こういったケースはまず、支援をお願いできる家族を包括は探していくことになるのだが、たいてい身寄りがなかったり、関わりを拒否されていたりすることが多く包括も困っている。明らかに判断力に問題があり医療機関の協力が得られる場合は市長申立による後見人の選任をおこない。後見人さんと一緒に本人の生活環境を調整することもある。
○ 「虐待か?」という判断に迷うケースの具体例は?
虐待かどうかというよりも客観的に不適切な状態をどのように支援していくかを検討していくことの方が重要であると考えていて、仮に虐待ではなく困難ケースであったとしても虐待に準ずるケースとして同様の対応を求められるが実情となっている。そういった柔軟な対応が必要だからこそ人の手による支援、専門職による支援というものが求められているのだと認識している。
虐待対応していく中で支援者自身に身の危険が及ぶこともあるため「介入に困る」ことの方が多くなっているため今以上に警察との連携、協力が必要と考えている。
○ 帰る時間が遅いとか必要以上に母に目が向いてなんで意地悪な娘になってしまったかなぁ・・・と感じる。
身近な存在であればあるほど、真剣に向き合っていれば向き合っているほど気持ちの角が立ってしまうと思う。「意地悪な娘」でもいいと自分を許すことも大切だと思う。
○ 認知症の程度にもよると思うが、優しく接するのは生易しい事ではない。虐待は難しい
認知症の周辺症状によっては一緒に生活することが困難なこともある。介護者自身のケアも考えて生活設計をしていかないと思う。かかりつけ医の先生や担当のケアマネさん、包括に相談ください。
○ もし後見人を必要とする状態になった場合でも特に道の後見人に自分の人生を預ける気持ちにはなれない。そこまでの信頼は1年、2年と付き合って初めて生まれるものではないか?
その通りで後見人選びは結婚相手選びと同様よく相手の事を知って選ぶことができたほうが良いですね。講演では,法定後見(事後的対応)の話しかしていないが、任意後見(あらかじめ備える)という自分がこの人にこういう事を託したいと選べる仕組みもあります。この仕組みは日本ではまだほとんど活用されていません。関係を深めながら自分が認知症になったらこれをこの人に託したいという事をしていく道もあるので元気なうちに関係を深めていって欲しいと思います。
○ 後見人制度の利用は認知症でなくても利用する事ができるのか?独居で子どもや兄弟がいない場合で施設入所する場合、入院する場合の保証人がいない。このような場合、手続きができるのか?
認知症,精神障害,知的障害など,判断能力に課題がみられる場合に利用できます。保証人という立場とはなれませんが,後見人はそれに準じた対応を行いますので,施設入所が認められることが多いです。
日本において、現時点では後見人には医療決定、手術や人工呼吸器をつけるかどうかなどの侵襲的医療行為を同意する権限はない。
○ 義理の父の後見人として父親を引き取り、嫁が義父の年金を管理するのは難しいのか?
家庭裁判所で後見人として親族が選ばれれば,後見人として財産管理を行うこととなります。ただし、多額の財産を持っていたり,親族間にトラブルがあったり、後見人となる親族自身が高齢で書類等作成できない等あれば家庭裁判所が親族を後見人として選ばないという可能性もあります。
○ 認知症の90歳の女性とコミュニケーションを多くとって意思決定を促したいという話だったと思うが、認知症の方とのコミュニケーションのコツがあれば教えてほしい。
大前提としては否定をしないということ。事実と異なっていたとしても,ご本人にとっての真実を大切に,しっかりと受け止めていくことが重要。そのような積み重ねによって相手が受け止められているという認識,信頼関係が構築されていくことが一番大切だと思います。
○ アルツハイマー型認知症の場合、在宅は難しいと思っているが、どのタイミングで施設になるのか?
1つは本人が寂しさ等感じ、人が近くにいないととても不安になり、色々な行動に結びついている場合、施設に入所すると穏やかに過ごせるという事もある。また,本人や支援によってケアが賄えず,本人の心身状態や生活状態に大きな支障がでてくるような場合も施設入所を選択肢として検討する場合がある。本人ができるだけ在宅で暮らしたいといわれる場合は、それを実現できるように,いろいろな立場のひとたちが知恵を絞っていくことが重要です。
○ 日常生活のための金銭管理も成年後見でしてもらえるのか。社会福祉協議会の支援事業で行われるのではないか?
社会福祉協議会が実施している日常生活自立支援事業は,その支援を受ける事自体が契約となっており、認知症等がかなり進行していると契約能力がないと判断される場合もあります。後見人と日常生活自立支援事業は,業務範囲が異なっています。日常的な金銭管理は日常生活自立支援事業で可能ですが、身元引き受け人や家の売買など重大な法律行為,契約の取消などに関しては,日常生活自立支援事業はできません。
○ 家庭裁判所に申し立てをしなくても直接弁護士に依頼してもよいのか
弁護士等と財産管理契約を結ぶ事もできますが、判断能力が低い状態でその契約を継続することは問題もはらんでおり,また業務範囲が限定されていたり,その契約だけでは通用しない事態も想定され、生活全般を支える必要がある場合には,社会的な後ろ盾をしっかりと得るという事で社会的に用意されている後見制度の利用につなげることが必要な場合が多いといえます。
○ 費用は?
任意後見の場合は本人が報酬額を決定することができます。法定後見の場合は,1年ごとに裁判所が本人の財産額などをベースとして総合的に勘案して決定しています。現在,岡山県の場合は月額2万円がベースとなっています。本人が負担することが難しい場合、市町村の報酬の助成制度(成年後見制度利用支援事業)もありますが、市町村によって要件は異なっています。
なお,報酬決定の仕組みについて最高裁の方針が打ち出されており,後見人がどんな仕事をしたか,によって報酬額が決定される方式に今後変更となる予定です。
○ 後見人としての仕事はいつから始まるのか?
任意後見:判断能力が低下した段階で,家庭裁判所に対して任意後見監督人選任の申し立てを行い,選任後,後見業務が開始します。
法定後見:家庭裁判所が審判を下し,その後確定(2週間)すれば後見業務が開始します。
○ 身寄りがなく、年金、金銭もない人が後見人をつける場合、どういう仕組みで支えるのか?
家庭裁判所への申立は,その必要性が認められれば市町村で行うことができます。本人も家族も申立が困難な場合で,本人の福祉を図るために必要な場合です。身寄りが無い方こそ後見人の支援が必要な方も多いので、各市町村の担当課や地域包括支援センター(高齢者)、基幹相談支援センター(障害者)、権利擁護センター(県内10市町村ほどにあります),などへご相談ください。また,後見報酬については,助成制度(成年後見利用支援事業)があります。
○ 看とり師制度はどのように考えているか?後見人は看とりをしてくれるのか
被後見人が住み慣れた場所で最期を迎えたいという想いがある場合は、その希望の実現に向けて支援します。在宅医療・福祉の支援体制として,訪問診療や訪問看護、訪問介護等の各専門機関と連携し、チームの一員として関わります。後見人として,その人らしい最期を迎えられるよう支援することが,本人の権利を擁護することにつながります。
○ 後見人はただの社会福祉士ではできないのか?やはり事務所に所属しないとできないのか?
岡山県社会福祉士会という社会福祉士の職能団体には「ぱあとなあ岡山」という成年後見の専門機関があります。そこに登録している社会福祉士は約100名おり、個人の社会福祉士として成年後見の受任をしています。ぱあとなあ岡山に登録するためには,成年後見についての専門的研修を受けるなど,一定の要件があります。
個人として本業をもちながら受任するパターンや,独立型社会福祉士事務所を開設している場合,あるいはNPO法人や弁護士法人に所属して受任するパターンなど,様々です。
○ 後見人を申し立てるために診断書を取る必要があると思うが、かかりつけの内科と初めて行く精神科だとどちらで取るのが望ましいか?
ご本人のことをよく理解しているかかりつけの内科医がいるのであれば、その先生に依頼することが通常です。最近では,内科医にも成年後見制度の理解が広まっているので,まずは相談してみましょう。
○ 後見人は医療行為に同意する書類へのサインはできないと思うが、判断力も身寄りもない人がそのような現状になったときにどうしたらよいか?
本人の医療行為に関する意向を聞き取っておき,それに沿った医療が受けることができるように対応します。また,医師をはじめとしたチームで検討して,本人にとって最もふさわしい選択ができるように努めます。いずれにしても,医師に対して成年後見人の権限等を理解していただくようにしています。そのうえで,「同意」ではなく,「医師からの説明を受けた」という確認のサインを行うなど,本人が不利益を被ることがないよう対応を行っています。
○ 申し立てをしたらどのくらいで決定がなされるのか。時間がかかり過ぎると対応もおくれるのではないか?
申立から1か月以内に決定する場合も多くみられますが,精神鑑定が必要な場合などは2~3か月かかる場合もあります。生命・身体・財産に危機がある場合は,そういった状況を家庭裁判所へ伝え早急に対応してもらいます。財産に関しては,後見申立と同時に保全申立をすることで,保護を図る方法もあります。
○ 知り合いの知り合いで老父の事について手続きをする際に自動車事故があり、その修理費用を請求されたということですが・・・
すみません,状況がわからずお答えができません
○ 単独世帯が増加すると後見人の必要は増してくると思う。後見について一部は不評を買う行為が報じられているがどうなっているのか?
後見人の質の向上,後見人への支援や,不正防止などの観点から,国をあげて取り組みがなされています。
○ 家族がいないと無理だと思う。
社会の変化とともに,家族がいない方は増えています。そういったなかでも,一人ひとりが自分らしく生きることができるよう,そのひとつの手段として成年後見制度が用意されています。ともに暮らす家族にしか出来ないことも多いですが,その方その方の状況のなかで,安心して生きがいを持って暮らす方法を一緒に考えていくのが後見人です。
申立て等についても、各市町村には担当課や地域包括支援センター、権利擁護センター(県内10市町村ほど)があり、家族がいなくても申立て支援を行っている機関があります。
○ かかりつけ医のように後見人のホームページはあるのか?
弁護士会,司法書士会(リーガルサポート),社会福祉士会などのホームページを参照ください。また,法人後見として活動している団体の多くはHPを開設しています。(岡山パブリック法律事務所、NPO法人岡山高齢者・障害者支援ネットワークなど)。
現在のところ,個人の専門職が一覧性のある形で紹介されているものはありません。
○ 後見人は第3者と親族(関係性は付き合いが薄い方)のメリットとデメリットはなにか?(どちらがいいのか迷うケースがある)
後見人候補者を誰にするのが良いかは,ご本人の希望と,その方に求められる支援を踏まえ,選ぶことが重要ですので,一概にメリット・デメリットということはありません。確実に言えることとすれば,第三者後見人のデメリットは報酬が発生する点です。親族については,後見人を担うことができるのか,十分な説明と同意が必要です。また,負担感から逆に本人との関係がこじれる場合もあります。最終的には,家庭裁判所が決定しますが,支援関係機関の意見も聞きながら,選択肢を提示し,実際に面会するなどしながら決定していくことが良いと思います。
○ 申し立てにつながるまでのネットワークが大事だと思う。必要な人ほどこの制度につながらない場合がある気がする。
この制度を必要としているにも関わらず利用に繋がっていなない方は多くいます。今回のような研修で少しでも多くの方が成年後見制度について正しく理解していただくことで、困っているけれどつながっていない方が適切に利用できるよう,そして制度を利用し始めてからも、一緒に支えていっていただくことをお願いできればありがたいです。
○ 後見人制度について、現在の身体状況が変わり、例えば本人の意思確認ができずに手術をするかしないかの選択はできないと聞いたことがあるがどうなのか?
後見人に医療同意の権限はありません。ご本人への事前の意向確認や,親族への意向確認,また医師をはじめとした支援チームで協議を行い,本人にとってふさわしい医療が受けられるように支援を行います。
○ 後見制度は元々は親族が多かったが、弁護士・司法書士、行政書士、社会福祉士が選ばれることが多くなった社会的な一番の背景とは何か?
高齢化の進展などから,高齢者のみ世帯,独居高齢者の増加など,頼れる親族が少ない場合が増えています。家族がいても家族に障害がある,介護負担や貧困等で虐待に至ってしまう,といった事も増えています。そうしたことを背景に,専門職が選定されることが多いといえます。
○ 後見人のニーズが高まると思うが、人数は足りるのか?
認知症高齢者の増加等に伴い,専門職後見人の不足は懸念されています。そのため,法人後見をはじめとした様々な工夫が求められています。
○ 医療を受けるにあたり、後見人が同意はできるのか?またその選択で後見人に精神的な負担が大きいと思うが法的な考えはどうなのか?
後見人に医療同意の権限はありません。一方現実には,後見人に医療同意を求められることは多く、精神的な負担を感じる後見人も多いと思われます。医療現場での後見人の役割の認識を深めていくことや,チームで意思決定支援を行うことなどが求められています。
○ 「利用手続きが難しそう」という声はないのか?また対応は
そういった声が多く聞かれます。ご本人やご家族を最前線で支援している福祉専門職にとっても「成年後見制度は難しい」と思っている方が多くみられます。
広報啓発や,実際の支援スキルを周知する機会を設けているほか,各市町村に権利擁護センター等の専門機関設置が進んでいます。また,令和3年度までに各市町村に中核機関という成年後見利用促進の専門機関が設置される予定です。(努力義務)
○ 在宅か施設かの判断はどの辺で判断したらよいのか?
ご本人のご希望を基盤として,とりまく状況を多角的に捉えたうえで,ご本人らしく生活できる場を検討していくことが基本です。ご本人の生命身体等についてのリスクが大きい場合は保護的(施設)選択肢をとる場合もありますが,いずれにしても後見人が判断するのは無く、本人や本人を取り巻く支援者で一緒に検討します。一度施設に入った場合も,再度在宅を目指すこともあります。
○ 後見人になったらその人の一生を支えるのか?骨を渡すという事だが今回の講演を聞いて理解できた。
最期まで伴走することが後見人のひとつの特徴です。
○ 後見人としての仕事はいつから始まるのか?費用はどのくらいかかるのか?
家庭裁判所の審判(決定)の後,それが確定(2週間)し開始します。後見報酬は裁判所が決定します。岡山では月2万円がベースで,財産額に応じて増加する形を基本としていました。時期は未定ですが,今後は後見人の業務内容によって報酬を判断する仕組みに変更となる予定です。
○ お金がない人でも濃密な支援はしてもらえるのか?
お金がある人と無い人で支援の差はありません。ご本人にとって必要とされる支援を行うことが後見人には求められています。また,様々な専門職等とチームで連携して支援します。
同時に,後見報酬の公的助成制度(成年後見制度利用支援事業)を拡充し,ご本人の負担や後見人の負担を軽減していくことが必要です。
○ 事前指示書に関して。いわゆる「性的な逸脱行動」になったら鎮静してほしいと考え、家人に頼んでいるが、これは実行可能なお願いか?
自らの意思表示でもあるので周りに迷惑をかけない手段として尊重されるべきです。眠気のある抗精神病薬や躁状態の治療薬が処方されることがありますが、適応外の処方なので事前に意思表示しておいた方が家族も治療に了解しやすいと思います。
○ 告知はどのように考えたらよいのか?薬を飲んでいるのに運転をしているが、医師が止めない。それが不思議だと感じる。
免許更新時や交通違反時に認知症が疑われると診断書の提出が必要になります。認知症と診断された場合は免許の取り消しになりますが、生活には問題がない軽度認知障害では免許停止にはならず、半年後経過を観察することになります。認知症の薬を服用する場合は認知症と診断されたことになるので、免許は返納すべきですが、簡単に告知すればよいという単純なものではありません。告知を受けて問題がないのか、告知された後の生活設計ができるのか、家族の支援があるのかなどを確かめながらの告知が必要です。また認知症診断後の予後も個人差があり、糖尿病や高血圧などの様に数値で判断できるものではありません。認知症の人の立場や気持ちを考えながら、事故の起こる前に運転をやめるように説得はしていると思います。
○ 車の運転を辞めてもらうよい方法はないか?
高齢者講習を合格できる場合は法的には問題になりませんが、最近は高齢者の事故がクローズアップされています。認知症の軽症例では、自動車運転を続けている人もおられ、家族の言葉も聞き入れない頑固な人は免許返納をすんなり受け入れないのが実情です。
を説明し、粘り強く説得すれば聞き入れてくれると思います。自信があっても自分で運転する年齢を決めておくとか、接触事故や交通違反を起こしたら、運転はやめると若い時に決めておくといいですね。
○ 家族の代諾が本人の立場になって行われていなのが現実だと思う
本人の利益を損なう家族では代理判断はできません。家族によっても意見が異なることもあります。すべての家族の意見を聞き全員の了解を得ることは困難なので、キーパーソンを決めて、本人の立場で考えていただき家族の意見をまとめてもらいます。家族のいない単身者では、後見人、病院や施設のスタッフなど、その人に関わるたくさんの人で考えることがガイドラインでは勧められています。
○ 全員にMoCA-J等を行うことは難しいと思うが意思決定能力の評価の仕方はどうなっているのか?
MoCA-Jなどで認知機能が低下していれば、判断力、理解力も低下し意思決定能力も低下することになりますが、財産の管理など経済的なことについては、裁判所がレベルに合わせて、後見人や保佐人を決めることができます。重度の認知症であれば意思決定能力はありませんが、本人の理解できる範囲での意思表示を尊重する対応が求められています。実際には様々な場面で問題になり、倫理的ジレンマがあるのが現実です。
○ 告知においてショックを緩和するにはどうしたらいいか?
認知症と診断し告知するだけでは不安になるだけです。告知後の生活を支援し、不安に寄り添い、解決する体制がなければ、告知はするべきではありません。癌を宣告された人も、これまでの人生に感謝し、できることをしっかりやりとげる覚悟が生まれると、人生を諦めずに楽しく生きることができます。悩みがあれば相談する場があることを保証し、楽しく生きることを目指して支援できれば不安はなくなります。
○ 自己決定には自己責任が伴うが、介助者として声の大きなご家族から言われると本人の声よりも家族の声が優先されるジレンマがある。家族は平気でこけないようにして(拘束など)というような事もある。
困った家族の代表です。自分たちの代わりをスタッフが担っていることに気がつかず、お金を出しているので当然であると考える家族がいることも現実です。スタッフにも人権があるので、できることとできないことがあると家族に説明し、選択をしていただき、ご不満ならご自分で介護をしてもらいましょう。
○ 中々理解しづらかったが、今日は講演会に来てはっきりと自分の不安な事が明確になりスッキリした。介護職なので今後、仕事に対しての取り組みを頑張りたいと思う。
ありがとうございます。高齢化、長寿化が進む日本で認知症への待ったなしの対応が求められています。正解はありません。認知症に関わる皆さんが専門家ですから、様々に起こることへの対応策を工夫していきましょう。
○ 本人と家族の希望が合わない時はどうするのか?
本人の意思決定を尊重したいところですが、家族の意見にも耳を傾ける必要はあります。理不尽な決定については、倫理的な問題点を上げて関係者で考えていきましょう。どこかに突破口が開けてきます。時間が解決してくれるのを待ってみましょう。
○ 本人の意思を尊重するという事はエンディングノートを書けない人には聞いておいて家族が判断してよいのか?
遺言として残してなくても、家族の聞いてきた話は本人の意思として参考にしてよいと思います。家族と利害が反する場合には、関係者も入って本人の意思を推定することになります。
○ 「認知症になったらどう考えるか?」を医療職のように認知症の事を思い描き、想像してもらえる事が難しいと思う
「なんど言ったらわかるの」、「同じことなかり言う」などの言葉が出てしまうのは、今のことが記憶に残らないことがどういうことか理解し、想像し、気遣うことができないからです。夫婦の間ではよくあります。これまでと違うことが起きると家族も困るので、愚痴を言うのです。受け入れるまで時間はかかりますが、そんなものだと諦めて初めて穏やかな生活に戻ることができます。認知症にならないと体験はできませんが、将来自分が認知症になったところを想像してみてください。
○ 本人の意思が分からない場合、家族やスタッフがしている事やしてあげたい事と本人がしてほしい事が同じかどうか悩む。
意思表示ができなくなった場合、意思を推定することは簡単ではありません。悩むこと自体が倫理的ジレンマがある証拠ですから、さまざまことを考慮して方針を出すように訓練しましょう。様々な事情が関わってくるので、悩むのは認知症に限られたことではありません。ジレンマへの対応にジョンセンの4分割法が参考になります。1人で考えずに集団で考えると悩みも小さくなります。
○ 「意思決定支援」と「コントロール」のバランスをどう勘案していくべきか?
違法行為や他人に迷惑になるような意思決定については支援をすることはできませんが、家族関係、生活環境など調整できることはできるだけ本人の意思を尊重した対応が望まれます。