1.加齢による記憶力低下と認知症の違いは?
忘れたことを忘れる場合は認知症を疑うが、忘れたことを忘れていない場合は正常
2.統合失調症の陽性時にも妄想・幻覚、イライラ、物盗られ妄想等、同じような症状があるのですが、認知症との違いを知りたい
認知症の妄想には理由がある。つまり、物盗られ妄想はなくしたと思っていないために誰かが盗ったと勘違いする。嫉妬妄想は以前は優しかったのになぜ今は冷たいのか、なんでこんなに違うのだろう、ということが原因でなる。統合失調症の場合は理由がない。
3.「うつ」と「やる気のないやつ」の見分け方は?うつ病とわかる検査方法(科学的に診断できる)はあるのか?
うつとやる気のない奴の見分け方は難しい。うつはやる気のなさを苦しんでいる。本当にやりたいがやれない苦しみがある。やる気はない人は苦しんでない人、そのあたりが見分け方になる。鬱の検査はセルフチェックから医療者がいろいろと言ってインお質問して答えてもらったり様子でする。少しした気分で変わる。何かで高く出たから鬱という風に早急に思わないほうがよい
4.MCIで治療はするのか?
MCIは治験をしているが、ポジティブな結果は出ていない。飲ませたほうがよいという先生もいるが、実際は本人ではなく、家族の方が物忘れを訴えており、家族の希望があれば飲む。
5.認知症は85歳からの発症が少ないと聞いた。85歳まで認知機能保てばよい?
85歳以上で増える
6.抑肝散が認知症によいとい事例をNHKのテレビで見たが、本当に効果があるのか?病院で処方されている薬と併用しても大丈夫か?それは処方してもらえる薬なのか?
認知症でBPSDで保険適応があるのは抑肝散だけでほかは統合失調症の薬。抑肝散は実際使って、軽いイライラとかは少し効く。証拠も治検をされ、いい人はいい。アセチルコリン系をたかめる薬のほうがずっとよいし、いくつかの行動障害に対してはバルプロサンとかイライラや怒りっぽさに効く薬はたくさんある。うまく聞かない場合に漢方を使ってもいい。高いし、バルプロサンのほうがずっと安い。そういう選択肢のひとつにはあるかもしれないが抑肝散にこだわる必要はない。試してもいいというくらい。
7.母は認知症でよく食べるがとても痩せている。不思議でたまらない。
レビー小体型認知症、パーキンソンを伴う認知症、アルツハイマー型認知症ともに基礎代謝が普通の人よりも高い。一番目立つレビー小体型認知症では20%くらい高い。そのため、何もしなくてもどんどん燃える。メタボ系の人にはうらやましい状態かもしれないが、消化管吸収問題などもあるため、うらやましくはない状態。
8.認知症の進行状況と介護家族が対応すべき心得など教えてもらえるものか?
認知症状の周辺症状として、家族との摩擦が起きるのは初期から中期。進行すれば周辺症状も少なくなりそういう問題も少なくなる。認知症の起こり始めや、中期の混乱している時期は本人も困惑している状況。家族がよくなってもらいたい、ちゃんとしてもらいたいという気持ちでかかわると、より摩擦が起きやすい。コツは少し待てば落ち着く。コツを勉強して対応できる人が増えると、地域で暮らせるようになるというのが理想(パーソンセンター)である。
9.本人に認知症だと伝えたほうがよいか?
ケースバイケースで難しい問題。自分の物忘れを心配して受診した方にはそのまま伝えることが多い。認知症だろう、なりそうだという場合も悲惨な見通しだけでなく、希望も添えて伝えたいと考えている。家族にまず認知症を説明して、本人へは未告知を希望された場合は、伝えないこともある。ただ、これは難しい問題で日々迷いながら診療している。
10.アルツハイマーはよくなるのか?治ることがあるのか?だんだん進行していくのを食い止められるか?薬の効果は?アルツハイマーになったら何年くらい生存できるか?
アルツハイマーは原則、物忘れが非常に目立ち始めてから亡くなるまで、平均10年といわれている。根本的な治療薬はありませんが、少しは進行を抑えているのでは?という治験報告はいくつかある。
11.アリセプト処方本人の意思で3日に一度のペースになっているが、それでよいのか?
アリセプトは半減期が長く、約3日程度で、脳の中に残っているため、効果があるのなら、大丈夫だが、薬によって半減期が違うため注意が必要。また、内服が困難な方には他の方法もある。
12.物盗られ妄想のある認知症の人に対しての接し方
対象になった方とは人間関係が悪くなってしまいがち。接し方のコツは、置いている場所を一緒に探したり、本人が見つけられるよう誘導することである。
13.一時病院を物忘れで受診していたが病院を嫌がり、現在はかかりつけの内科医院で投薬を受けている。時には専門医の受診をしたほうがいいのか?
本人が認知症を自覚して受診するということは難しい。投薬を続けられるのであれば、専門医の必要はない。大切なことは、薬を続けること。かかりつけ医研修制度という研修があり、内科でも外科でも認知症の一時対応について勉強しているので問題はない。また、専門病院は込み合い、待ち時間が長時間になることもあるため、かかりつけの先生が対応してくださるということは、本人にとってもよいことだと思う。
認知症疾患医療センターとしてもかかりつけの先生に治療をお願いすることは多々あり、今後も連携をとっていきたいと思っている。
14.何がアミロイドβタンパクやタウタンパクは何の原因で溜まるのか?何をしたら減るか?食べ物でよくなるのか?
アミロイドβタンパクが溜まりやすいということがわかってきたところだが、細かいところはまだまだ分かっていない。一部、遺伝子の関係もあるといわれている。
15.同じ薬でも効き方に個人差はあるか?
当然ある。薬が効く場所がとても非常にダメージを受けている方は、ほかの場所が保たれていても、効果が乏しい。逆に、行動異常などが目立っていても、肝心のアセチルコリン系が保たれている場合は効果がある。もちろん、生物学的な問題だけでなく、良い環境で家族に囲まれていると薬の効果も期待できる。
16.友達が認知症です。励ましたりほめたりしているが、どういう声掛けが一番か?
本人が自覚していないときは、難しいが、基本的には他の病気の時と同じで、認知症を持ちながら楽しく生きたら良い。認知症だからといって、励まそうとするのではなく、認知症でも生きていけると周りの人が思っていれば励まさなくてもそのままでいいと思えるようになる。また昔の記憶が共有できるので、昔の記憶の中でこんなことがあったね、と話をすることはよいと思う。ほかに体を動かすことは認知症の方でもできるので、そういう活動を一緒にできるといいと思う。
17.認知症検査をするとさほど低くないが、現実に応じた買い物や金銭管理が全くできない(浪費)というのはどういう対応したらいいか?
認知症の検査はインターネットでも流れているため、受診しているのにすでに検査を暗記してこられている方もおられる。検査で満点をとっても家族からの情報や目の前の姿で認知症だろう、という方もおられるため、検査だけでは診断はできない。
また認知症にもいろいろなタイプがあり、記憶力は問題ないですが、前頭葉の機能が落ちると判断できない、理解できない、抑制がとれて大きな買い物を簡単にしたりするなどの症状がでる。
自身で判断できないというときは後見人制度を利用するとよいと思う。単身だったり、親族が遠くにいる方が自分をサポートしてくれる補佐人、後継人を決めるなどの対応も可能。
18.脳梗塞で死んだ細胞はどうなるのか?外に出るのか?その後はどうなるのか?
死んだ細胞は消失して、水になる。写真では穴が開いたように見える。
19.レビー小体型認知症とアルツハイマー型認知症の違いを教えてほしい。
細胞の壊れ方が違う。レビー小体型認知症の場合は比較的系統的にダメージを受けるが、中枢だけでなく抹消もダメージを受けるため、便秘などの消化器症状、立ちくらみや、夢の異常で夜中に叫んだり、幻覚がみられる。アルツハイマー型認知症は、いろんな細胞が広範にダメージを受ける。物忘れから始まり、幻覚・妄想は、物盗られ妄想が多い。